大阪地方裁判所 昭和30年(ワ)4612号 判決
本件土地が原告の所有であり、同地上に本件建物が存在し、この登記簿上の所有名義人が被告となつていることについては当事者間に争いのないところである。
よつて被告の「本件建物の登記簿上の所有名義人は被告となつているが実質的には訴外川永俊二の所有であつて、右登記は同訴外人が本件建物の建築に際し被告より建築資金として融資を受けた金一、六〇〇、〇〇〇円の債務の弁済を担保するため被告に対し本件建物をいわゆる譲渡担保として譲渡したことによるものであり被告は同訴外人よりこれを賃借しているにすぎない。」との答弁について検討する。
被告の右答弁は形式上は「被告は本件建物の所有者である。」という原告の主張を否認しているように見えるが以下にのべる理由によつて畢竟原告の右主張事実に対する自白であると考えられる。いわゆる譲渡担保には担保の目的たる権利が内外共に移転するものと外部的にのみ移転し内部的には移転しないものとの二種があるがそのいずれであろうと結局において該権利を担保権者に移転せしめる効果をもつものであり、その譲渡担保なることは権利移転の単なる原因にすぎなく、この点においては譲渡担保は一般の売買や贈与との間に差異がない。このことは譲渡担保によつて取得した権利の内容が売買等によつて取得されたそれとの間に対外的効力において全く差異がないことによつて明らかである。両者はただ譲渡担保による権利取得者において譲渡人に対し譲渡の目的たる権利を担保の目的以上に行使しないという第三者に対抗し得ない不作為義務を負うている一点において差異があるにすぎない。このようなわけであるから譲渡担保の目的が所有権である場合には対第三者関係においては譲渡担保権者即所有権者であり、本件における被告の立場はこれに該当する。
以上の次第であるから、被告としては原告に対し更に本件土地を使用し得べき被告自身の権限を主張立証しない限り本件建物を右地上に存置することができないものであるところ、被告においてこの点につき何等の主張立証をなさないから原告に対し本件建物を収去して本件土地を明渡すべき義務がある。